ニュースレター第2弾を公開します

【テーマ】最近の原⼦⼒発電をめぐって(その必要性と安全性など)⼋雲サロン第142回(1998.4.10)
【ゲスト】板倉治成⽒(都8機)前東京電力㈱福島第一原子力発電所長㈱東京電気工務所常務取締役

お話の概要
カラーOHPのグラフ・図などを数多く使い、分かりやすい説明をして頂いた。

  1. 原子力発電の現状
    (1)日本の状況
  • 1966年英国から輸入した日本原子力発電会社の東海発電所が第一号であった。これは本年3月、コスト高のため廃炉に着手。
    *運転中のものは53基(内東電17基)、発電電力量の約30%(東電40%)を担う。
    *設備利用率は当初輸入機器のもので60%程度から現在は80%以上で安定
    (2)海外の状況
  • 1956年英国で世界初の原子力発電が開始。
    *運転中のものは31ケ国430基以上(米国110基、仏62基、そして日本)で、世界全体の全エネルギーの7% (日本12%)。計画中のもの50基以上
    (3)国内外のエネルギー事情
    *限られた世界のエネルギー資源のうち先進国が5分の4を使い豊かな生活を実現
    *一方発展途上国における経済発展と人口増によるエネルギー需要の増大、石油・石炭など化石燃料による地球環境問題(温暖化・酸性雨など)の深刻化から、先進国を中心に化石燃料への依存度を下げ原子力比率を高める期待があり、日本でも10%ほど高めるべきとの議論がある。
    *また日本のエネルギーの80%は輸入と不安定であり、セキュリテイを高める必要から政府の長期通しも石油依存度を下げるため、電源についてバランスのとれたベストミックスを目指している。
  1. 原子力発電の特徴
    *供給基安定性があること:100万KWの電源のためにはウランで30t、しかし石油で1,400,000 t と備蓄面で優れており、しかもリサイクルにより使用済み燃料を再処理し、さらに使えるなど準国産エネルギーといえる。
    *地球還境問題への対応上優れていること
    *経済性があること:kwh当たり9円、石炭石油10円、水力13円である。
  2. 原子力発電の安全性
    *原子爆弾はウラン濃縮度100%、発電燃料は3から5%であり、安全に制御することが目的
    *制御のための多重かつ独立した防護システムがある。すなわち変化の徴候を徹底して検出し、少しでも何か把握したら「先ず止めること」、そし「冷やすこと」さらに「閉じ込めること」からっている。このため構造と非常装置など多重シ・テムがある。例えば5つの壁(燃料ペレット、その集合被覆管、原子炉圧力容器、格納容器、コンクリート建屋)がある。検出装置は所内はもちろん地域のモニタリングにより野菜や牛乳まで自治体が定期的にチェックしている。
    *働いている人の放射線管理も全国レベルの個人別登録により平均して年間レントゲン写真1枚レベルにとどめている。
    *トラブルの連絡通報も国や自治体とレベルを0から7まで決め徹底している。日本の実績はほとんど0から1の間で、件数的にも世界より一桁低く1基当たり0.5件である。
    *基本はセフテイーカルチャーを徹底させることが第一と考え、すべてに安全が優先し、公開することを組織・個人に浸透させている。
  3. 原子力発電所と地域社会
    *発電地域と消費地との交流を進めている
    *地元雇用への寄与(福島の地元町村で2、3軒に1軒は仕事に関わっている)[懇談の概要]
    *高速増殖炉の見通し、核融合炉への期待、また積極的な意味での東京湾立地の条件と可能性、プルサーマル(使用済み燃料から再利用するプルトニュームとウランの混合燃料)の経済性、廃棄物管理、耐震構造•免震構造の議論など意見交換は1時間30分を越え率直活発なものであった。

【現役学生の感想】

都市環境学部 R.T.さん

 東北地⽅太平洋沖地震に伴う津波の影響で発⽣した福島第⼀原⼦⼒発電所の事故は原⼦⼒発電の「安全神話」は崩れ現在では多くの原⼦⼒発電所で廃炉の決定や再稼働の⾒通しが⽴っていない。このサロンが⾏われた当時の不安の声は不幸にも現実となってしまった。原⼦⼒発電への認識もこの20数年で⼤きく変わったということがわかる。持続可能な地球環境を⽬指し、我々は原発事故の反省を活かしつつ新たな道を模索し続ける必要があると思う。